料理旅館ならではのアマゴの活き造りは絶品。さばきたての新鮮な川魚の刺身は、淡泊な中に甘みを感じるまさに清流の川の幸。地元栽培や自家栽培の野菜を使い、地元食材を吟味した料理はすべて女将の手作り。化学調味料を一切使用せず、代々伝わる味を守っています。(ご希望により野菜中心メニューも可。)
天川村の玄関口、川合交差点を過ぎると、左手に白壁に黒い柱がきりりと立つ料理旅館「まえひら」が見えてきます。声が素敵なやさしいご主人と気さくで楽しい雰囲気の女将さんが迎えて下さいました。
「まえひら」さんは、明治16年に創業以来、川魚料理や山菜料理で旅人をおもてなししてこられたお宿です。代々伝わるお料理を今も女将が受け継ぎ、日々創意しながらも、その味を守っておられます。
吉野の清流で育ったあまごを使う名物のあまごの活け造りは、川魚料理を謳う「まえひら」さんならではのもの。なかなか他所では味わえないお味です。
また、お膳にもう一品付く川魚料理は、季節によってその旬で一番おいしい魚、調理方法に変わるとのこと。何が付くのか楽しみですね。(この時は、山椒風味のアマゴの煮つけでした)
お出汁の中に数種類の地元の野菜(大根・にんじん・ごぼう・たけのこ)や手作りこんにゃくを炊いた「だいはん鍋」は、創業者の呼び名「大門の半四郎」から付けられそうで、野菜とコクを出すために加えられた豚肉のうまみが沁みだしたお出汁とに頂きます。なお、ベジタリアンの方には昆布出汁のみで調理した「だいはん鍋」も用意してくださるとのことでした。
塗りの器には、旬の山菜や野菜を使ったお料理。おうかがいしたのが3月下旬でしたので、つくし・わらび・ふきのとう・ずいきなどの山菜の持ち味を生かしたお料理が並びました。
思わず手に取ってみたくなる塗りの器は、昔、お寺の行事に「報恩講」というものがあり、その時に使用されたものだそうです。漆の器は、見た目に美しい一方、手入れに気を遣うそうですが、喜んで下さるお客さんが多いのでずっと使っています。とおっしゃられていました。
ご飯は、「えんどうご飯」と「めはりずし」。(こちらも季節によって変わるそうです。)
めはりずしは、吉野・熊野方面でよく食べられる郷土食です。家庭によってさまざまな作り方があるようですが、まえひらさんでは、自家製のからし菜漬けでおにぎりを包んだ、やや小ぶりのものです。これなら目を張らないでも食べることができますね。
中のおにぎりは、鰹節・刻んだからし菜・梅干しなどのやさしい味わいです。
「春は山菜のにがみが美味しいですね。これからは、たけのこも出るし、朴の葉が大きくなったら、朴の葉ずしもつくりますよ。夏になれば、枝豆が出て枝豆ごはんにするし、みょうがもいいですね。秋になれば、栗にキノコ。いろんな炊き込みご飯ができますよ。そうそう冬の大根ご飯も美味しいです。」女将さんが次々と語られる食材に、食欲がどんどん刺激されます。
「山里の幸御膳」は、川魚やお肉が付かない「野菜中心メニュー」に変更も可能です。
上記写真のメニューの場合、山菜の天ぷらの他自家製こんにゃく(柚子みそ・梅みそ添え)や季節野菜・山菜の炊き合わせ・地元の豆腐などが加わります。(完全にベジタリアン食をご希望の方は、ご相談下さいとのことです)
「田舎の料理を習ったままに作っているだけよ」とにっこり笑って語られる女将からは、季節それぞれに素材を生かしたお料理を、楽しんで作っておられる様子が伝わって来ます。
お料理全てが、女将さんの手作りなのはもちろんですが、お味噌や梅干し・お漬物なども昔ながらの方法で手作りされ、お泊りのお客さんが気に入られ「お土産」にされることも多いそうです。
美味しいお料理のために素材を大切にし、野菜や山菜など自家製で用意されるものの他は、地元吉野の確かな方から取り寄せたもの使うと語られる女将さんの言葉からは、創業以来の料理を受け継ぐ使命と共に旅館を営んでこられた強い意志を感じました。
旬を大切にし、手間と暇を惜しまない女将さんのお料理にかける心意気とお客様に喜んで頂きたいというおもてなしのこころがたっぷり感じられる「山里の幸御膳」。ぜひ味わってみてください。ご予約をどうぞお忘れなく。